もくじ
感染リスクを抑えながら救命処置を行うために
まず、新型コロナウイルス感染症が流行している状況下では、すべての心肺停止傷病者に感染の疑いがあるものとして対処する必要があります。
救命処置に不可欠な胸骨圧迫(心臓マッサージ)では、早いテンポで胸骨を強く圧迫しつづける必要があるため、ウイルスなどを含む微粒子が浮遊した空気(エアロゾル)が発生する可能性があります。
感染リスクを下げながら救命行為を行うために、まず次の対処を行なった上で救命行為を実施しましょう。
- 胸骨圧迫の際、救命者は必ずマスクを着用する
- 場所が室内であれば、窓を開放する、換気扇を回すなどして換気を行う
成人の場合
成人の心肺停止の多くは、不整脈などによる循環不全が原因(心原性心停止)です。この場合は血液の中に酸素がまだ残っており、迅速に胸骨圧迫を行えば数分間は脳や心臓に酸素を送ることができます。
ですので、救助者に人工呼吸の技術や意思がある場合であっても、感染リスクを抑えることを優先し、人工呼吸は実施せず、胸骨圧迫による救命措置を行うことが原則となります。
手順は以下のとおりです。
1.両肩を軽くたたきながら「わかりますか?」など声をかける
2.反応がない場合、判断に迷う場合は大声で助けを求め、周囲の人に119番通報とAEDを持ってきてもらうように依頼する
3.呼吸を確認する
胸と腹部の動きを見て、普段どおりの呼吸をしているか10秒以内で確認します。この際、傷病者と顔があまり近づきすぎないようにしましょう。
4.普段どおりの呼吸がない場合や、判断に迷う場合は、ただちに胸骨圧迫を30回行う
4-1ハンカチやタオル、マスクなどを傷病者の鼻と口にかぶせます。
4-2胸の真ん中に手のひらを当て、もう片方の手を重ねて組みます。垂直に体重がかかるように腕を真っすぐ伸ばし、組んだ手の上に肩が来るような姿勢で行います。
本ページのイラストは、クリエイティブ・コモンズに沿った下記のすべての条件に従う限り、自由にお使いいただけます。
- 原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示する
- 非営利目的である
- 元の作品を改変しない
4-3手のひらの手首に近い部分だけに力を加えることを意識しながら、傷病者の胸が少なくとも5cm沈み込む程度に圧迫します。これを10秒に15〜20回程度のペースを意識して行います。圧迫の速さは、童謡「うさぎとかめ」のテンポを想像するとわかりやすいです。
5.AEDが到着したら電源を入れ、電極パッドを貼る
傷病者の体が汗などで濡れている場合は、タオル等で拭き取ってから貼ります。
6.AEDが電気ショックの必要性を判断する
AEDには、傷病者の心電図を解析し、電気ショックが必要かを判断して音声で伝える機能があります。AEDが心電図を解析している間は、救助者や周囲の人は傷病者から離れましょう。
7.ショックボタンを押す
電気ショックが必要だとAEDが判断した場合は、本体の「ショックボタン」を押します。周囲の人が傷病者の体に触れていないことを必ず確認しましょう。
8.救急隊に引き継ぐか反応や呼吸が戻るまで3~7を繰り返す
子どもの場合
子どもの心肺停止は窒息などが原因になっていることが多く、人工呼吸の必要性が比較的高いとされています。
救助者が人工呼吸の技術を身につけており、実施する意思がある場合には、人工呼吸も実施します。その際、手元に人工呼吸用の感染防護具があれば使用します。ですが、感染リスクから人工呼吸にためらいがある場合は、成人と同じように胸骨圧迫だけを行いましょう。
手順は以下の通りです。
1〜3.成人の場合と同様
4.普段どおりの呼吸がない場合、判断に迷う場合は、ただちに胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせで救命処置を行う
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胸骨圧迫において、手を当てる場所や手の組み方は成人と同じです。子どもの体格によっては片手でも問題ありません。また1歳未満の乳児には、指を2本当てて行います。力の強さは、傷病者の胸の厚さの約1/3程度沈み込む程度を意識しましょう。
5.AEDが到着したら電源を入れ、電極パッドを貼る
傷病者が小学生未満と推測される場合は、AEDに小児用パッドや小児用モードがあれば使用します。ない場合は成人用のもので問題ありません。
6〜8.成人の場合と同様
救命処置の実施後に救助者が行うこと
- 救助者や周囲の人は、救急隊員に引き継いだあと、すぐに手と顔を石鹸と流水で十分に洗います。
- 救命処置の際に鼻と口にかぶせたハンカチやタオルなどは、直接触れないように注意して廃棄します。
より安全な救命行為のために
心肺蘇生の手順について、より詳しく解説されている動画やウェブサイト等を紹介します。