もくじ
アルコール消毒ができない理由
アルコールに限らず、さまざまな物質の刺激によって、「肌荒れ」や「赤み」、「腫れ」や「痛み」などを起こす場合があります(※脚注1)。
お酒が飲めない体質の人も、肌に「赤み」や「かゆみ」などが出ることがあります(※脚注2)。
特に注意が必要なのがアルコールアレルギーです。アルコールが原因で、体内で過剰な免疫反応が起こり、「赤み」や「かゆみ」などの皮膚症状のほか、「息苦しさ」などの症状が出ることがあります(※脚注3)。
このような症状が出た場合は、アルコールとの接触を避けましょう。それでも症状が治まらない場合は、皮膚科やアレルギー科などの医療機関に相談してください。
そのほかにも手に傷があるなど、さまざまな理由でアルコール消毒が難しい方がいます。感染対策が必要な場合には、アルコール消毒を強制せず、手洗いの場を用意するなどの配慮をお願いします。
※脚注1 「接触皮膚炎」(MSDマニュアル家庭版)
※脚注2 「エタノール接触皮膚障害症例と交差反応について」(遠藤博久、小林寬伊、大久保憲)
※脚注3 「アレルギー反応の概要」(MSDマニュアル家庭版)
アルコール消毒ができない場合の消毒方法
手洗い
手指消毒の基本は手洗いです。手洗いはアルコールの効きにくいノロウイルスなどにも効果があります(※脚注4)。
水で手をぬらした後、石けんをしっかり泡立てて、20秒以上かけて洗い、よくすすいだ後しっかり乾かしましょう。特に爪や指先、指の間や手首の洗い残しには、注意が必要です。石けんがない場合でも、流水によるすすぎを15秒程度行うだけで、ウイルス量は100分の1程度に低下するという研究結果もあります(※脚注5)。
※脚注4 「ノロウイルスに関するQ&A」(厚生労働省)
※脚注5 「Norovirusの代替指標としてFeline Calicivirusを用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討」(感染症学雑誌 Vol.80)
次亜塩素酸水・次亜塩素酸ナトリウムは、手指消毒に使えない
物の消毒に使う「次亜塩素酸水」のなかには、手や口の消毒に使えると表示している製品があります。しかし、次亜塩素酸水は人体に対する有効性や安全性が確認されておらず、「手に使用して痛みを感じた」という事例が報告されています(※脚注6)。
次亜塩素酸水と混同されやすい「次亜塩素酸ナトリウム」も、触ると肌を痛めたり、目に入ると失明したりすることがあります(※脚注7)。
アルコール消毒の代わりに、次亜塩素酸水などが設置されている場合がありますが、これらを使用することは避けましょう。
消毒液の空間噴霧
感染対策として、次亜塩素酸水が噴霧されている場合があります。しかし、あらゆる消毒液の空間噴霧は、有効性や安全性が確認されていません。また、次亜塩素酸ナトリウムについても大変危険なため、空間噴霧は絶対に行わないようにしてください(※脚注7)。
※脚注6 「物のウイルス対策等をうたう『次亜塩素酸水』」(独立行政法人国民生活センター)
※脚注7 「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」(厚生労働省)
手袋を使用する場合の注意点
感染対策として手袋をしている方がいます。しかし、手袋が汚れた状態で顔や物に触ると、感染を広げる恐れがあります。また手袋の上からアルコール消毒をすると、穴が開いたり、破けたりすることがあり、十分な効果も得られません(※脚注8)。
「自分の手をアルコールから守る」手段として手袋をする場合は、破れた時のために予備を用意し、着脱の際は手を洗いましょう。
マスク使用時の注意点
マスクは清潔な手で、隙間なく着けましょう。マスクには自分や他人の飛沫(ひまつ)が付いています。マスクを整えるために触る際は「ひもや端など、最低限の部分」にとどめ、目や鼻、口などに触れないように気をつけてください。マスクに触った後はなるべく早く手を洗いましょう。
※脚注8 医療機関で手袋を使用する際は、患者ごとに手袋を外して手指消毒をし、新しい手袋を使います。「手袋の上からの手指衛生」(Medical SARAYA)
アルコール消毒を求められた時の対処方法
アルコール消毒を求められた時は、理由とともにアルコール消毒が難しいと伝えましょう。「アルコールアレルギー」であると伝えると、理解してもらいやすいかもしれません(アルコールによって何らかの症状が出る状態を、まとめて「アルコールアレルギー」と呼ぶことがあります)。必要に応じて、手洗いを提案してもよいでしょう。
口頭での説明が難しいと感じる場合には、意思表示カードや、市販されているアルコールアレルギーバッジなどで理解を得る方法もあります。自分にあったコミュニケーションの方法を探ってみてはいかがでしょうか。
「アルコール消毒意思表示カード」 ご自由にお使いください
おわりに
COVID-19感染拡大下において、アルコール消毒はマナーの一つになりつつあります。しかし、誰もがアルコール消毒をできるわけではありません。
感染対策を強制したり、できない人を排除したりしないよう、お互いが心地よく過ごせるための方法を検討していただけると幸いです。