私たちは、「さまざまなクライシスにおける一人ひとりの痛みに耳を傾け、生命と暮らしを支えるための必要なサポート情報を整理し手渡すとともに、社会のほころびを編み直すための対話と協働のネットワークを育みながら、明日へと願いをつないでいくこと」というミッションのもとで活動をしている非営利団体です。
このブログでは、私たちのこれまでの活動、そしてこれから目指す未来について、お話します。
スワローポケットの前身
私たちの活動が始まったのは、新型コロナウイルス感染拡大に対する国内の警戒が徐々に高まっていった2020年2月のことです。
さまざまな情報が飛び交う一方で、「障害のある方、外国語話者の方など、個別のサポートが必要な場合も多い方々に向けた情報が、当事者に届きにくい状況にあるのではないか」という、不安や相談が多く寄せられました。
それを受け、Yahoo!ニュース個人にて「新型コロナウイルス、情報が届きにくい方(子ども・外国語話者・視覚/聴覚障害等)のサポート・不安のケア」(外部リンク)という記事を公開しました。
その後、全国の小中学校一斉休校要請が出され、子どもの勉強や遊びだけでなく、保護者の仕事やお金、家庭内での家族の距離感やコミュニケーションなど、さまざまなところに影響が出てくることが予想されました。
そのような状況へ対応するべく、「新型コロナウイルス感染症に伴う、暮らしのさまざまな影響に対して、市民と専門家の協働で、必要な情報をわかりやすく集約・整理し、さまざまな不安や困りごとのある方に届けること」を目的に、「このゆびとまれ!」で集まった市民有志にて任意団体「とどけるプロジェクト」を立ち上げ、Webサイトを開設しました。
私たちの活動のほとんどは、フルリモート・オンラインで行われました。感染症対応のためだけではありません。本プロジェクトは、SNSやブログでの呼びかけに応えてくれた有志による活動なので、住んでいる地域も、日々の生活リズムも、仕事や家庭の状況も、実にさまざまだったからです。
世界に広がる新型感染症に対しては、全員が「困りごと」の当事者となります。だからこそ、それぞれが無理なく、健やかにプロジェクトにかかわれるよう、ボトムアップで対話的な活動を続けてきました。
持続的で粘り強い活動へ
2020年は、COVID-19によって、複雑で、多様で、長期的な問題が顕在化していった年でした。
- 感染症の対応・治療にあたる医療機関や保健所などの逼迫した状況
- 心理・経済・社会的な影響も時間差で広がっていくこと
- 障害や疾患のある方、外国籍などの方、子育て世帯などは、複合的な困難さが生じやすいこと
- 地域や産業、コミュニティごとに状況や課題、必要なサポートも多様化していくこと
- 外出自粛などの環境変化から、あらゆる人のメンタルヘルス上のリスクが増加していくこと
これらは、「COVID-19が引き起こしたもの」では決してありません。私たちの社会が今まで見ないふりをしてしまっていた、さまざまな社会構造上の課題が顕在化したものです。
「これまで通り、COVID-19に関連する暮らしの困りごとへのサポートは続けながら、背景にある社会構造上の課題にもアプローチしたい。緊急支援ではなく、日常の中で、粘り強く、持続的に活動を続けていこう」
メンバーで話し合いながら、より持続可能性の高い形で、活動を継続していくことを決めました。
団体名と、ロゴに込めた願い
新しいフェーズで活動するにあたり、私たちは団体のすべてをメンバーで編み直しました。
今までの活動を通じて一人ひとりがどんなことを感じ、考えてきたのか、これからどんなことを大事にしていきたいのか、そのようなことを言葉とイメージで共有しながら、新たな団体名、ロゴ、ミッションなどのコーポレート・アイデンティティを作り上げました。
活動を続けていくにあたり、私たちが何を大切にして、何を目指していくのか、改めてプロジェクトにかかわるメンバーで話し合いました。その際、一人ひとりが「とどけるプロジェクト」の活動に参加する中で感じたことを、言葉やイメージで共有していきました。
こうして生まれたのが、「スワローポケット」です。
スワローポケットとは、「ツバメの巣」をイメージした造語です。
ツバメは、昔から幸福の象徴です。人々はツバメの巣ができると、そっと巣立ちを見守りながら自分のできる範囲でのサポートをします。
また、ツバメの巣は、小枝や小石などの「なんでもない、小さなもの」が寄り合ってできています。
そんなツバメと巣をイメージし、
- 安心・安全であたたかな、ひとりひとりにとっての「ポケット(巣)」
- ツバメの巣を見守るように、みんなで見守り支え合っていける社会を目指す
- ひとりひとりができることを持ち寄る
こんな願いと意思を、名前に込めています。
スワローポケットのロゴは、いくつかの円のような形が重なり合ってできています。いずれも完全な円形ではなく、それぞれにゆらぎやいびつさ、異なる色合いを持っています。私達人間には、一人ひとり色んな凸凹があって、それぞれにちがった人生を生きている。一人ひとりのあり方(Being)それ自体がありのままに肯定されること、そんな一人ひとりが集まり重なることで安心・安全な「ポケット」をつくり、育むことができること。そんな願いを込めました。
スワローポケットは、2020年12月1日に一般社団法人として法人登記を行い、準備期間を経て、2021年3月31日にWebサイトのリニューアルを行いました。
スワローポケットの3つの取り組み
新たなミッションのもと、これまで「とどけるプロジェクト」として培ってきた知恵とつながりを活かし、これからは、以下の3つの活動に取り組んでいきます。
1. クライシス(感染症・自然災害・経済危機など)の発生~回復プロセスで発生する、暮らしのさまざまな困りごとに対し、必要なサポート情報を集め、整理し、手渡していくこと
COVID-19だけではない、さまざまなクライシスに際して、「ここに来れば、自分に合ったサポートにつながれる」と活用していただけるようなポータルサイトを構築・運営します。
また、とどけるプロジェクトに引き続き、困りごとにまつわるアンケート、アウトリーチでのヒアリングを実施していきます。集まった声を一つひとつ聞きながら、情報を丁寧に精査し、各分野の専門家と協働することで、一人ひとりに生じる不安や困りごとに少しでも寄り添えるような、そんな記事を制作します。
2. 市民一人ひとりが、それぞれの課題・知恵・願いを分かち合い、共に生活を組み立てていくための協働のネットワークを紡いでいくこと
私たちは、活動を通して培った知恵やネットワークを、社会全体の共通知として活かしていきます。
そのために、地域・行政・企業・NPOと連携して、暮らしの中での「課題」「知恵」「願い」を分かち合いながら、協働できるネットワークの構築をしてまいります。
3. 調査研究やプログラム開発、政策提言などのプロジェクトを企画・実行していくこと
私たちは、今後またクライシスが発生したときに、孤立や分断が繰り返されることを少しでも防ぎたいと思っています。取り組みの中で見いだされた構造的課題と、それを解消するための知恵や実践を、社会システムへと埋め込んでいくため、学術研究やプログラム開発、政策提言といったかたちで、新たな社会システムの構築に貢献していきます。
現時点では、
「メディアガイドライン策定・提言プロジェクト」
「アウトリーチガイドライン策定・提言プロジェクト」
ほか、複数の研究開発プロジェクトを進めています。
スワローポケットのコミュニティ運営
私たちは、スワローポケットのメンバー一人ひとりが、健やかに、自律的に関わり方を選択できることを重視しています。
そのために、あらゆる情報がクリアかつオープンであること、挑戦を妨げないこと、一人ひとりの痛みや願いを大切に扱うことなどを方針として掲げ、ルールや相談窓口の整備を進めてまいります。
皆さまと共に、明日への願いを紡いでいく。
私たちスワローポケットを、どうぞよろしくお願いいたします。