もくじ
感覚過敏とはどんな特性?
感覚過敏とは、視覚や聴覚など、感覚の一部がとても敏感な特性のことです。たとえば、「太陽がまぶしすぎてモノがよく見えない」「人の話し声が大きく聞こえて、会話をするとすぐに疲れてしまう」などの特徴が挙げられます。
なかには、感覚の一つである「触覚」が過敏な人もいます。特に、皮膚の感覚過敏のある人の場合、布地の縫い目やタグ、特定の布の触感などに苦痛を覚えたり、シャワーの冷たさが痛く感じられたりなど、肌に触れるものに対して強い不快感を覚えることが多いようです。
また、「嗅覚」が過敏であるがゆえに、特定の匂いや、匂いがこもりやすい環境下で、気分が悪くなりやすいという人もいます。一般的にはなんともないと思われることや環境が、ストレスとなることがあるのです。
感覚過敏とマスク着用のむずかしさ
こうした、触覚や嗅覚などに感覚過敏がある人にとって、マスクの着用は大きな困難になることがあります。顔に布が触れていることや、耳に紐がかかっていること、あるいは、マスクの中に匂いがこもることなどが、ストレスになりやすいからです。
また、不快感により、集中力が途切れて仕事でミスをしやすくなったり、いつも以上に疲れやすくなってしまったりと、さらなる困りごとにつながるケースもあるのです。
加えて、当事者から多く聞かれるのが「マスクをつけられないことで、周りから白い目で見られるのがつらい」という悩み。「感覚過敏のためマスクがつけられません」という意思表示カードが作られるなど、工夫が進んでいますが、感覚過敏やそれにともなう困りごとへの認知度はまだまだ低いのが現状です。
周りに感覚過敏の人がいたら
感覚過敏は「見えない障害」であるとも言えます。その見えなさゆえに、周囲からの理解を得づらいこともあります。
感じ方というものは個人差が大きいため、他の人が何をどう感じているのかを想像することは、なかなかむずかしいものです。そのため、つい「そんなことが気になるの?」「我慢できないの?」と思ってしまうことがあるかもしれません。
しかし、感覚過敏は、苦痛を感じている本人にとって切実な問題です。そして、感じ方は努力や我慢で変えられるものでもありません。また、自分が感覚過敏であることを知らない人は、周りの人より自分は不快な思いをしていることに気がつかず、我慢をしすぎてしまうこともあります。こうした問題を解決するためには、周囲の理解が必要です。
もし、身近な人から「自分は感覚過敏である」「マスクを付けるのがどうしても不快である」と打ち明けられた場合には、その人の感覚の特徴について、具体的に聞いてみると良いでしょう。
そのうえで、「どうしたらストレスを減らせるか」について、本人と周りの人びととで話し合うように意識すると、お互いにとって過ごしやすい環境を作ることができるはずです。
感覚過敏のある人に知っておいてほしいことと対策
知っておいてほしいこと
感覚過敏は「悪いこと」や「ワガママ」では決してありません。たとえば、生まれながらにして背がとても高い人や、絶対音感を持つ人がいるように、感覚過敏も人の特性の一つです。感覚過敏がある自分を否定したり、「できない人間だ」という思い込みを持つ必要はまったくありません。
もし感覚過敏によって、外に出ることや、人と関わることに疲れてしまったときは、無理をせず、なるべくストレスの少ない環境でゆっくり休んで大丈夫。特性のために他の人とは違うケアが必要であることは、とても自然なことです。
対策
マスクは自分からの飛沫(咳やくしゃみで飛び散るしぶき)を防ぐためのものです。他人と十分に距離を保っている場合や、対面で会話をしない場合、ランニングなどの激しい呼吸が必要のない場合などには、着けていなくても感染対策上問題ありません。
また、仕事などでどうしてもマスクを着用しなくてはならない場合は、数十分に一回、マスクを外して過ごす時間を設けられないか、あらかじめ周囲の人に相談してみても良いかもしれません。
あるいは、マスクよりもストレスの少ない飛沫防止策について検討してみるのも良いでしょう。
画像は、ハンドメイドの飛沫防止グッズ。咳やくしゃみをするとき、近距離で話すときは布を押さえて顔に密着させる必要があるものの、必要なとき以外は布が顎を覆わないように工夫することで、制作されたご本人(感覚過敏の当事者)のストレスはかなり軽減されたそうです。
こうしたグッズは、100均などで売っている身近な材料で簡単に作ることができます。市販のものを探す、ご自身の特性に合わせてオリジナルのグッズを作るなど、防止グッズの最適な形を探ってみても良いかもしれません。