もくじ
デジタル端末の使用に伴う課題
デジタル端末の使用については、これまで実現し得なかったさまざまな効果や利点がありますが、使用機会がますます増える中で、次のような課題が見え始めました。
- 【体力の低下】一般的なデジタル端末の利用には身体運動をほとんど伴いません。端末の使用時間が増え、そして身体運動量が減るほど、筋力、持久力、平衡性などの低下につながるという懸念があります。
- 【座位による影響】近年、運動量とは関係なく、座位時間そのものが健康に及ぼす影響も注目されています。長時間同じ姿勢で座り続ける場合、血流の低下による健康リスクや、姿勢の変化、また、腰、首、腸など特定の部位に負担をかけ続けることによる痛みや疾患につながる恐れもあります。
- 【眼精疲労】近くの物を見るときの目は、内部で収縮が起こり、緊張している状態になっています。長時間、至近距離でものを見続けること自体が、目の負担となります。デジタル端末の使用は至近距離になりやすいことに加えて、モニターからの強い光を受けることや、集中して瞬きの回数が減るなど、さまざま負担を目に与えるため、「眼精疲労」という、目の疲れや痛み、頭痛や肩こりなどの、休息しても回復しづらい病的状態になるリスクが高まります。
- 【生活リズムの乱れ】長時間のデジタル端末の使用は、疲労を感じる一方で、身体運動を十分に行えていないため、夜にぐっすり眠れなくなる可能性があります。また、ゲームや動画視聴などが夜間まで継続すると、睡眠のリズムが崩れ、学校など日中活動に影響が出ることがあります。
- 【心理面・社会面の変化】依存状態に進行すると、他の活動に対する興味・関心が低下し、リアルの友人関係が希薄になるなど、対人関係にも影響が及ぶことがあります。また、端末を利用していないとイライラや抑うつ気分など、不快な感情が生じるようになり、その不快から逃れるためにも利用し続ける、という状態に陥ることもあります。
ここで注意したいことは、必ずしも、デジタル端末の使用そのものが、上記の課題と直結している訳ではないということです。いずれの変化も、比較的長期間に不適切な使用を続けることで、徐々に引き起こされるものと言えます。
上記のような課題があることを理解したうえで、それを防ぐための使い方を考え、適切に使い続けることで、いずれの課題も防げるものと思われます。
ルールや約束を子どもと一緒に決める
デジタル端末を使用することによってさまざまな問題が起こりうることを踏まえると、子どもが無制限にデジタル端末を使用することは望ましくなく、なんらかのルールや約束は設定する必要があると言えます。
この際、子どもと保護者のコミュニケーションを土台として、「子どもと一緒にルールや約束を決めること」が重要となります。
子どもが小学校の中学年や高学年以上であれば、子どもの主体性を尊重しながら、一緒にルールや約束を決めていくのがよいでしょう。
ただし、未就学児や小学校低学年の場合は、発達段階として自己管理がまだ難しい面があるので、ある程度の枠組みを保護者が決めることも必要となると思われます。
ルールや約束は家庭ごとの希望や事情などに応じて作り上げていくことになりますが、子どもと保護者が一緒に話し合うときの指針となるよう、スマートフォンの使用ルールの一例をご紹介します。
スマートフォンの使用ルールの一例
- 使用できるとき:放課後~20:00
- 使用できないとき:学校中・食事中・お風呂中・トイレ中
- 普段の入浴後にはスマホは見ない。ただちに寝る準備に入る。
- ルールを守れなかった場合は、翌日24時間、スマホを一切禁止とする。
- 毎月最終金曜の夕飯後に、ルールについて親子で振り返る。
この例では、「生活に支障をきたさない」ということを中心にして、使用できるときに加えて、使用できないときや場所も決めています。また、ルールを守れなかった場合の対策も先に決めておくことで、子ども本人の抑止力にもつながると思われます。
子どもの自発的な変化をサポートするかかわり方を
ルールや約束を一緒に決めたなら、それで終わりではなく、ルールや約束が生活にうまく浸透していくように、子どもの変化を促すための工夫をしていきましょう。
子どもの思いを聞く姿勢をもつ
決めたルールや約束から逸脱している使用を子どもが望む場合は、ルールを強調する前に、子どもがなぜやりたいか、どれくらいやりたいのかを、知ろう、理解しようとしてみてください。受け入れがたい主張のときもあるかもしれませんが、保護者の目の届かないところでこっそり使用することにならないよう、普段から内容を聞くという姿勢を示し、保護者に相談しやすい雰囲気と関係づくりを意識していただければと思います。
ルールや約束を守れたら、ほめる
決めたルールや約束を子どもが少しでも守れたときは、その都度ほめることも大切です。特に、守れたという結果だけをほめるよりは、子どもががんばった姿勢や、がんばった過程(プロセス)をほめることが、子どものやる気(内発的動機付け)を高めるうえで有効だと言われています。少しでも取りかかろうとしている姿が見られたときや、いつもより早く終えることができたときなどに、そのことについてほめたり励ましたりすることで、約束を守ることを後押しすることができます。
デジタル端末のコントロール機能を活用する
端末使用の制限は、必ずしも子どもの意思だけに任せる必要はなく、ペアレンタルコントロール機能(例:「ファミリーリンク」「スクリーンタイム」)や、タイマー機能など、端末に備わっている管理用の機能を活用することも有効です。
「いつでも自由に快適に使える」という環境から離す
子どもがいつでも自由にデジタル端末に触れられる環境、そして自由に・快適に使うことを後押しするような援助がある場合は、かえって使用を助長することにもつながります。いつでも自由に快適に使えるという環境から離すためには、普段は端末を子どもの目の届かないところで保管したり、パスコードを設定したりすることも重要です。ゲーム時間が長い子どもの場合は、「ゲームのお供」となるお菓子の買い置きや軽食の提供などがゲームの使用を助けることになりますので、例えば、ゲームをやめたあとにおやつタイムにするなどの工夫が考えられます。
代替行動を増やす
デジタル端末の利用時間を減らすなどの「やめさせる」ことだけでなく、代わりとなる他の遊びや活動に誘うことも有効です。ゲーム好きの子どもであればアナログのカードゲームやボードゲームに誘ってみるなど、子どもの興味・関心に沿った内容の提案から始めてみるのがお勧めです。運動や適度な日光浴のためにも、外遊びの時間も欲しいところです。もし子どもが運動に抵抗がある場合でも、子どもの好きなキャラクターグッズを見にショップに行く、好きなゲームやアニメに関連するスポット――いわゆる「聖地巡礼」へ出かける、のように、子どもの興味に沿った何らかの屋外活動を検討することもできると思います。
困ったときの相談先
子どものデジタル端末の使用に関しては、冒頭でも述べたように、まだ明確な指針がありません。家庭だけで抱え込まずに、他の家庭ではどのようにしているかなど、周囲とも情報共有をしながら、みんなで広く取り組んでいければと思います。
困りごとの内容に応じて、以下のような機関にも相談してみてください。
- 【遊びに関する相談】児童館や、小学校の放課後児童クラブ、放課後子ども教室は、子どもに健全な遊びを提供することを目的としています。デジタル端末以外の遊びを求める際には、このような場を利用することも有効です。自治体や地域の子育て支援団体が発行する広報誌やWebサイトでも、子ども向けの遊びイベントの情報が掲載されていることもあります。基本的にこれらの場では、子どもの遊びに関する相談も受けています。
- 【身体症状の相談】姿勢、肩、頭痛、目など、身体に何らかの変化が生じたときは、症状に応じた医療機関を受診し、状況を説明して、相談してみてください。
- 【生活リズムや心理面に関する相談】子どもが通われている園や学校も身近な相談機関です。学校の場合はスクールカウンセラーへの相談も可能です。お住まいの地域の子育て支援センターなども、子どもの生活面や心理面に関する相談を受けていますので、相談しやすいところから問い合わせてみてください。
- 【依存症に関する相談】デジタル端末に関する依存症の不安がある場合は、専門の治療施設やカウンセリング機関で相談できます。
これからも私たちの生活の中で付き合い続けるデジタル端末。この記事では、子どものデジタル端末の使用に関する大枠の指針を示すことを目的としましたが、記事で取り上げられていない困りごとや痛み、必要なサポートがありましたら、ぜひ次のアンケートフォームからお聞かせください。私たち「スワローポケット」は、引き続き、生活の困りごとに関する情報を集め、整理して、お届けしていきます。